前項で扁桃の摘出手術が大掛かりなもので、術後も含めると
かなり辛い手術であることは説明しました。

これだけの労力、費用、苦労を重ねて、そもそも扁桃を摘出することで
実際に口臭が改善するのか、という点は大きなポイントになると思います。

何人かの方から摘出手術後の経過、口臭の変化等の貴重な体験を聞いていますので、
それを元に書いていきます。

臭い玉(におい玉、くさい玉)は無くなるのか?

扁桃摘出によって臭い玉は明らかに出来にくくなります。
扁桃を切除して摘出していますので、扁桃(扁桃腺)の特徴とも言える
凹凸も無くなり、臭い玉が発生しにくくなるからです。

臭い玉は細菌の死骸や食べかすが口の中で長時間固まって出来るものですが、
カスが溜まりやすいポケットが無くなることで臭い玉自体が出来なくなる、という訳です。

そのため、臭い玉が出来やすくて口臭の元となっているというケースでは口臭が改善する場合もあります。
前項でお話した相談者の方も口臭に酷く悩んで扁桃を摘出しましたが、
摘出後はとにかく口の中がさっぱりしてそれまでのモヤっとした感じが一切無くて感動した、とのことでした。

手術後に摘出した扁桃を見せてもらったそうなのですが、扁桃(扁桃腺)の奥に臭い玉の固まりみたいなものがビッシリあって、
始めは摘出に反対していた医者にも「取って良かったね。」と言われた
そうです。

扁桃の奥というのはつまり口の奥、喉の方に埋まっている部分ですから表面からは見えない部分ですね。
このような奥に付着している臭い玉は綿棒や指では除去することが非常に難しいと思います。

このお話のように臭い玉(細菌の死骸の固まり)が
喉の奥にたくさんこびり付いているケースでは
扁桃の摘出が口臭改善に大きく貢献する可能性は一時的には高いと考えられます。

隠れ扁桃炎のケースでの口臭は?

隠れ扁桃炎の場合も口臭がかなり改善される可能性があります。
臭い玉とも密接に関係しますが、隠れ扁桃炎の場合には細菌が扁桃で繁殖しやすく、
これが口臭の大きな原因となっていると考えられるため、です。

また、隠れ扁桃炎でないとしても細菌が繁殖しやすい扁桃を切除、摘出することで
細菌の繁殖を抑えることが出来るので口臭が発生しにくくなる
のです。

仮に鼻や喉等、他の部分に問題があるケースでも後鼻漏等によって口内へ流れ込んできて、
これが扁桃に付着して細菌が増殖する
場合もあります。

扁桃自体が炎症を起こしていなくても
鼻炎や蓄膿、上咽頭炎等で他の部位に炎症が起きていると
それらの細菌が扁桃に流れ込んできて大きな口臭につながる
ということです。

扁桃を除去することにより、仮に他の部位での炎症があったとしても
全体としての口臭の程度を抑えることが出来る可能性がある
、という訳です。

実際に扁桃摘出手術をされた方は皆、口臭が軽減したと言っていました。
口臭改善に大きな効果が見込めそうな扁桃摘出ですが、何か問題点は無いのか?

残念ながら問題はあります。
後々、話を聞くと、口臭が戻ってしまったというメールも実は多かったのです。
扁桃の摘出という大きなリスクを取っても、確実に口臭が改善するとは限らないということが
相談者からのメールで分かったことは大きな収穫でした。

以下、説明していきます。

抗生物質による口臭改善の可能性

術後は口臭が激減してびっくりした、息がスッキリしている
というお話が多かった訳ですが、1つの可能性として抗生物質が考えられます。

扁桃の摘出手術の術後には抗生物質の服用があります。
口の奥、喉付近に大きな傷がある状態ですので感染症にかかったら一大事です。

そのため、術後は当然、抗生物質を摂取する訳ですが、
これにより口腔内の細菌自体も一掃されます。

抗生物質による殺菌により口腔内が一時的にクリーンな状態になっており、
その結果として口臭が発生していないだけ
、という可能性があるということです。

実際に退院後、暫くすると口臭が発生してきました、
という話も多かったのです。

この場合には、抗生物質によって口臭が抑制されていただけ、と考えた方が良いと思います。
つまり扁桃が口臭の主原因では無かったというパターンですね。
また、別のケースとして1年以上経過してから口臭が戻ってきてしまったというお話もあります。

この場合には別の部位が扁桃の変わりをしている可能性があります。

扁桃の代替作用の問題

術後、かなりの期間が空いてから口臭が再発したという場合には
扁桃が口臭の原因だったが、扁桃が新たに作られたという可能性があります。

どういうことかと言いますと、扁桃が摘出された後に、暫く普通に生活していると
口や喉の別の部位が扁桃の役割を果たす場合がある
のです。

扁桃が無くなったことで体の免疫機能の一部が無くなった状態になっています。
そこで、以前と同じような免疫機能を守るために扁桃の役割の変わりを体が勝手に作り出す
、ということです。

扁桃と全く同じものが出来るという訳では無く、扁桃のように凹凸がたくさんある訳でもありません。
そのため、臭い玉が以前のように溜まりやすいということは無いはずなのですが、口臭だけは元通り、という状態です。

体の元に戻る作用について

体が元に戻ろうとする作用が働いて口臭が元に戻ることはよくあります。
口臭の原因は様々ありますが、基本的には臭いの元となる細菌の繁殖が原因です。

ドライマウス、臭い玉、舌苔、鼻炎や蓄膿、扁桃炎等。
全ての問題は細菌が一定数以上に繁殖することで口臭に繋がっています。

で、今回のケースでは扁桃を除去して悪さをする細菌の繁殖する場所を減らした訳ですが、
悪い細菌はそれに納得していません。(苦笑)

何とかして再度、自分達が天下を取ってやろうと必死になっています。
これが体が元に戻ろうとする力の一種
なのです。

生活の歪みや遺伝、食生活等の生活習慣により、口臭が発生する状態がデフォルトならば、その状態に体は戻ろうとする、ということです。

この力は非常に強いもので、副鼻腔炎の手術やアレルギー治療の手術等でも同様の報告を受けています。
つまり、最初は効いたけど後で口臭が元に戻ってしまったというケースです。

今回の扁桃摘出でもこの戻ろうとする力と扁桃の代替機能によって
口臭が元に戻ってしまう可能性もある、と考えておいて下さい。

以上のことより、口臭治療を目的として扁桃を摘出することは、かなり慎重になるべきと
私は感じています。